物理学者の間違っている常識 (シリーズ5)

 否定された光速度不変原理下でのマイケルソン・モーリーの実験結果とエーテル(媒質)について


 シリーズ1・2で静止系の2つの光路の光を静止系と運動系で、同時に観測すると、一つの光路の光は、運動系の時間が遅れ、もう一方の光路の光は、時間が進むという「光速度不変原理の矛盾」を指摘しました。
 そして、運動系(他の系)の光の軌跡の速度は、移動速度を加味しなければならないことの説明を行いました。
 アインシュタインが提唱した「光速度不変原理」(特殊相対性理論)に矛盾が生じたので、光に関する伝搬法則の見直しをする必要があります。
 「特殊相対性理論」の考え方が出現するまでは、固定エーテル理論がありましたが、マイケルソン・モーリーの実験結果から、固定エーテル説が否定され、様々な考え方が出てきました。
 「固定エーテル下での運動物体の収縮説」「エーテル移動説」「エーテル随伴説」です。
 まず、「固定エーテル下での運動物体の収縮説」(ローレンツ・フィッツジェラルド収縮)を見てみましょう。
 マイケルソン・モーリーの実験結果は、当時、考えられていた固定エーテル説によるエーテル風の影響(C±V)を否定する実験結果が得られました。
 そこで、固定エーテル説に固執するローレンツらは、移動する物体は、収縮するとして、横方向の収縮を考え、固定エーテル説によるエーテル風の影響(C±V)があってもマイケルソン・モーリーの実験結果が得られるような理論を打ち出したのです。
 では、マイケルソン・モーリーの実験結果を見てみましょう。
マイケルソン・モーリーの実験装置は、実際はもっと複雑ですが、図-1に示すように、垂直方向と横方向の装置を360度回転させ、光が往復する光路の長さの差(時間差)で、干渉縞の変化を観測し、エーテル風の影響を調べようとしたものです。  

    

            図-1(FN高校の物理より引用)


 装置は水平面を22.5度ごとに回転させ、測定を行っています。装置を90度回転したとき、垂直方向と横方向が逆転し、エーテル風の影響があれば、干渉縞の移動が観測されると予想されていました。しかし、干渉縞の変化は、観測されませんでした。
 装置の観測状態を簡略に示すと図-2のようになります。

           

    (文献とは、装置の図が若干違っていますが、同じ光の状態です。)
                図-2


  各光路の光の移動時間を計算してみます。
  縦方向の時間t₁は、
   t₁=2L/√(C²-V²)
  横方向の時間T₂は、
   t₂=2CL/(C²-V²)
となります。
 時間差Δtは
   Δt=2CL/(C²-V²)-2L/√(C²-V²)
になります。
 固定エーテルを考えていた物理学者が、この時間差Δtを0になるようにすれば、エーテル風の影響があっても、マイケルソン・モーリーの実験結果が得られるという発想で、収縮率の考えが生まれたのです。
 そこで、横方向のLを収縮させれば、時間差Δt=0になるので、下記のような収縮の式を出しています。
    Lm=L×√{1-(V/C)²}  Lm;動いているときの長さ
                   L ;止まっているときの長さ


 観測する光を往復の光にしたため、収縮が起きれば、図-2のように、エーテル風の影響があったとしてもマイケルソン・モーリーの実験結果が、得られるのです。
 そして、収縮が起こっていると縦横の光の速度が同じだとマイケルソン・モーリーの実験結果が得られないので、必ず、地上の観測者は、収縮した状態でエーテル風の影響を受け、移動方向の光速度は、C±Vとして観測しなければ、実験結果が成り立たなくなるのです。
 実験の考察を見てみると、マイケルソン・モーリーや多くの物理学者の皆さんは、大きな誤りをしていました。
 光の光路の計算で、絶対静止系から見た状態で計算していることと、この状態は、エーテルが、完全に移動した状態なのです。
 マイケルソン・モーリーが装置の光の移動状態を観測したときに、決して装置は移動しません。光のみが移動します。
 絶対静止系から見た状態とは、光の挙動が違うのです。また、エーテルが固定していたら図-2のような状態は、絶対静止系から観測する事などできません。
 絶対静止系の光の挙動を考えればわかる事です。それを見てみましょう。
 絶対静止系(固定エーテル)のa点からb点に向けて光を照射すると、必ず、b点に到達します。
 装置のA点(絶対静止系のa点)より、B点(絶対静止系のb点)に向けて光を照射すると、装置は移動しても、固定エーテル下では必ず、ab点のライン上を移動し、b点に到達します。

               

                  図-3
 装置の移動状態は、大げさに書きましたが、光速度が非常に速いので、装置は、ほとんど移動していない状態で光がほぼA点に戻ります。
 固定エーテル下で図-2のような光の軌跡を絶対静止系から観測するには、A点から斜めに、光を照射するか、エーテルが完全移動しない限り、観測できないのです。
 では、マイケルソン・モーリーが観測している状態は、どうなるのでしょうか?
 マイケルソン・モーリーは、装置が固定した状態で、光やエーテルの移動を観測します。

          

                 図-4
 左図は、固定エーテルの場合で、固定エーテルが移動し、それに伴い、a・b点が移動します。光は、a・b点を結ぶ直線を移動していますが、光を観測すると、光の移動状態は、斜辺の軌跡として観測されます。これは、光行差角に相当するもので、光路は、2Lになります。
 また、斜辺は、軌跡ですから シリーズ2で記述したように、移動速度の影響を受け、軌跡の移動時間は、2L/Cになります。
 このように考察すると、固定エーテルの場合、移動方向(横)の光の移動時間は、
  t=L/(C-V)+L/(C+V)=2CL/(C²-V²)
となり、縦横の装置を移動する光の移動時間の差は、
  Δt=2L/C-2CL/(C²-V²)
となり、ローレンツらが、提唱した収縮率では、マイケルソン・モーリーの実験結果が得られなくなるのです。
 また、実験は、22.5°ごとに、回転して観測していますが、22.5°回転したときの状態についての考察は、してありませんでした。
 エーテルが完全に移動した場合、光路Lに変化は、ありませんが、固定エーテルの時は、下図のような状態になり、縦横の装置が受けるエーテル風の影響も変化するのです。

          

                  図-5
 この時の光路差は、回転する前と、(詳しい計算は、していませんが、)変化していることが考えられ、同じ収縮率では、マイケルソン・モーリーの実験結果の説明がつかなくなると考えられます。
 このように考察していくと、マイケルソン・モーリーの実験結果は、収縮など起こらずに、全ての方向の光速度をCとして観測していたのではないかと考察できます。
 このように考察すると、収縮理論による固定エーテル説は、否定されたことになります。
 では、地球とともに、エーテルは移動しているのでしょうか?
1800年代中頃から1900年代初頭における、エーテルの移動速度による影響を光の移動状態で調査して、固定エーテル説・エーテル移動説・エーテル随伴説についての考察が行われていました。
 この数々の実験においても、矛盾が見られたので紹介します。 
 エーテルに関する実験結果は、「FN高校の物理」の「フィゾーが運動媒質中の光速度(随伴係数)を測定した方法(1851年)」(http://fnorio.com/0132Fizeau_1851/Fizeau_1851.html
にまとめてありましたので、ここに記載されていた事柄等についてみてみましょう。
 エーテルの移動速度による影響は、「エーテル固定説」、「エーテルの完全移動説」、「エーテル随伴説」がありました。
 ここで、地球の観測者が、観測する各説の光の状態(速度)を明確にしておきましょう。

     

               (α=1/n²)
                 図-6
 固定説では、エーテルの中を地球が移動しているので、大気中でもエーテル風の影響を受け、移動速度に見合った速度の影響を受け、地球の観測者は、移動方向の光速度を
Ca±Vとして観測します。
 移動説では、エーテルが地球の大気とともに移動しているので、観測者から見ると大気中のエーテルは固定した状態になり、大気中で観測される光速度はどの方向もCaとなります。
 随伴説では、観測者から見ると、エーテルは、Vより小さい速度で移動し、移動方向の光速度は、Ca±αVとなります。
 次に、縦方向の光の移動状態を見てみましょう。 

   

                   図-7
 固定エーテル説では、大気圏も大気圏外もエーテルは、速度Vで移動するため、縦方向の光は、図中の点線(太)として観測されます。移動方向が、逆の場合は、この点線の角度も逆になり、観測される角度にずれが生じます。
 エーテル移動説では、地球の大気中でエーテルは、移動しませんが、真空系に対して、大気のエーテルが速度Vで地球と同じ方向に移動しているため、ちょうど、移動する車のサンルーフに降る雨を室内で観測するように、大気と外界の境界面で観測される光行差角が大気中でもそのまま観測されます。(実際には、屈折や、大気の状態変化等で、もっと複雑になっているかもしれませんが、大筋では、このような進み方をすると考えています。)
 FN高校の物理でエーテル移動説では、光行差角の説明ができないとしていましたが、大気と真空の境界面の現象を考えると光行差角の説明はつくのです。
 随伴説では、地球に対して、大気のエーテルはαVで移動し、真空系のエーテルは、Vで移動します。真空に対して大気のエーテルは、速度V-αVで移動します。境界面では、V-αVに見合った光行差角が観測され、その角度の光が、大気で観測されますが、大気のエーテルが、αVで移動しているため、真空と大気によってできた光行差角の光が平行移動したような光行差角の光軌跡(点線)を地上で観測します。


 この事柄を念頭に置き、「FN高校の物理」に記載されている実験を見てみましょう。


1. フィーゾーの実験
 フィーゾーの実験は、媒質の移動速度が、光速度に与える影響を調査したものです。

     

             図-8(FN高校の物理より引用)
 図のような装置を使用し、光は、二つの光路に分けられ、それぞれ逆の水流を通り、
検出部で、できる干渉縞を測定して水流(空気)の影響を調査する装置です。
 水を移動させることにより、干渉縞が移動し、その移動距離より、各説の考察を行っていました。
 考察においては、図-9のように、地球の移動速度を考えないで、光の進行方向に対して、同じ方向の水流を一つにして議論が行われていました。

    

                  図-9
 エーテルの議論を行うのに、地球の移動速度によるエーテルの影響を無視して、議論が行われているのです。
 当然のことながら、得られる結果も違うことが予想されます。
 ここでは、詳しい議論は行いませんが、フィーゾーの実験結果については、見直しが必要と考えられます。
 フィーゾーの実験において、一つだけ有力な知見が得られています。
 それは、水では、干渉縞が移動したのに、空気では、干渉縞が移動していないことです。これについては、私の仮説も含めて後に説明したいと思います。


2. 随伴説によるボスコビッチ提案の光行差実験


 光行差角の測定で、望遠鏡に水を満たしたときと、入れないときの光行差の測定をし、随伴係数を算出しています。この時の説明文の光の状態を図-10に示します。 
 なお、この実験では、水を入れても、入れなくても光行差角に変化は、現れませんでした。

    

            図-10(FN高校の物理より引用)
 光行差角に関しては、図-7に示したように、大気と真空系の境界面の挙動を考慮する必要があります。
 FN高校の物理では、エーテル移動説では、光行差角の説明ができないとしていましたが、境界面の挙動を考慮すると、説明ができ、水を入れたときに、角度に変化が起きない唯一の理論と考えられます。


3.ヘックの実験
 ヘックが用いた装置は、下図に示すようなもので、ハーフミラーで、二分割された光線は光路1と光路2を通り、検出部に到達し、できる干渉縞を観察しています。
 この装置を180°回転したときに、エーテル風の影響により、光路の長さ(通過時間)が変わるので、干渉縞に変化が起き、その変化よりエーテルの影響を調査したものでした。

      

             (FN高校の物理より引用)
                 図-11
 しかし、回転後も干渉縞の変化は見られませんでした。そして、FN高校物理では、エーテル移動説を否定し、随伴説で説明がつくとしていました。
 しかし、次のような考察を行うと、エーテル移動説では、干渉縞の移動は、絶対に起きないのです。
 回転で影響する光路部分は、ABとCD部分です。エーテル移動説でのこの部分の状態を見てみましょう。
 ここで、Ca:空気中の光速度   Cw:水中の光速度

           

                 図-12
 回転する前と後での光路の速度変化がないので、各光路の移動時間も変わりがなく、回転前後の光路長も変化がないので、干渉縞は絶対に変化しません。
 エーテル移動説は、地球とともにエーテルが移動し、地球の観測者の周りはエーテルが固定した状態になります。
 しかし、FN高校物理の計算式では、水だけに、エーテルが移動するという考え方で、空気はエーテル風の影響を受けるとして計算を行い、移動エーテル説では、干渉縞が移動するとして、エーテル移動説では、この現象を説明できないという見解を示していました。
 FN高校の物理の記載内容の一部をそのまま転用します。

      

 この赤線の部分は、明らかに空気に対するエーテル風の影響を考えた数式になっています。
 エーテル移動説の本来の考え方からすると、この部分のVは、存在しないので、経路(光路)の差はなくなり、干渉縞は、観測されないことになり、エーテル移動説で説明がつき、唯一、光路差の変化がない説なのです。
 随伴説のこの部分の状態を見てみましょう。

         

                  図-13
 随伴説では、回転前後で、速度の変化があり、光路長の長さが変化します。
 この変化が、干渉縞の移動に寄与するかどうかは、実験装置の精度の問題ですが、精度が良ければ、干渉縞が生じるのです。


 以上の事柄をまとめると、エーテル移動説で説明がつく事柄としては、
①  ボスコビッチ提案の実験
②  ヘックの実験
および、マイケルソン・モーリーの実験があげられます。
 しかし、フィーゾーの実験における、空気の移動により干渉縞の説明は出来ません。
 エーテルの移動はどうなっているのでしょうか?
 私は、ある仮定をしてみました。この事柄が真実を表しているとは考えてもいませんが、可能性があるのではと考えています。
 実際に、あるかどうかは、わかりませんが、エーテルを透過させない重金属のような物質があったとします。
 この物質で囲まれた電車が速度Vで移動したときの室内の空気の中の光速度と電車の中の空気を速度Vで移動したときの光速度に違いがあるのではないかということです。

        

                  図-14
 周りの壁が、エーテルを透過しないので、中にあるエーテルは、壁により引きずられてそのまま移動し、エーテルは完全に移動します。
 一方、電車の中の空気が動く場合は、エーテルは、空気とともに、完全には、移動しないのではないかと考えています。
当然のことながら、その中の光の速度は違ってきます。


 では、地球を見たときにどのようになるかと考えると、オゾン層・電離層・バンアレン帯・プラズマ圏・地磁気・重力など、地球環境には、様々なものがあり、これらの事柄の相乗作用等で、エーテルが地球とともに移動しているのでは、と考えています。
 これは、あくまでも私の想像です。
 エーテルの存在や挙動についての確認は、「宇宙空間を移動するロケットの室内と室外での観測等のさらなる実験が必要なのでは?」と考えています。


 皆様のご意見・質問・反論等をお待ちしております。